『日本歯技』2022年10月号巻頭言

『日本歯技』2022年10月号 巻頭言

歯科補てつ物製作過程等の情報提供推進事業の意義

 歯科医療機関から外部の歯科技工所に義歯等の歯科補てつ物の製作を委託する場合、現状では患者自身が何処の歯科技工所で誰がどのように製作したか等の情報を把握することは難しい。このため平成29年度より厚生労働省は毎年、国の委託事業として「歯科補てつ物製作過程等の情報提供推進事業」の実施団体を公募し、これまで公益社団法人日本歯科技工士会(以降、日技)が受託し、担ってきた。令和3年度までにすでに全国26都道府県で実施され、令和4年度も日技が6県での実施に向け、厚生労働省、日本歯科医師会とも連携しながら準備を進めている。
 本事業は患者の知る権利の求めに応じた歯科補てつ物等の製作過程に関する情報(委託先、製作者、製作過程等)を提供し、国民にとって安心・安全な歯科補てつ物等の普及・推進を図ることが目的である。そのため、歯科補てつ物の製作を担う歯科医療関係者(歯科医師及び歯科技工士を対象)には情報提供の必要性及び歯科技工士関係法令に関する研修会を通じて一層の理解を深めることが求められる。
 また、情報提供に関して効果的に周知できる媒体(ポスター、リーフレット、電子機器等)を作成し、歯科医療機関の協力を得て、ポスター掲示と患者に対してアンケート等を実施し、事後評価を行う。
 これまでに厚生労働省は、社会状況の変化に伴い、歯科技工に関連した平成17年3月に示された「歯科技工所の設備構造基準」及び「歯科技工所における補てつ物等の作成等及び品質管理指針について」をはじめ、平成23年9月の「歯科医療の用に供する補てつ物等の安全性の確保について」に至るまで数回にわたる通知を示してきた。
 また、デジタル化が急速に進むなか、歯科技工所間連携やリモートワークにおいてもトレーサビリティの確保は担保されなければならず、令和4年に関連した法令改正等を加えている。こうした変化にも歯科医師、歯科技工士が即応して情報を共有し遵守することは歯科医療機関相互の信頼関係の構築をもたらし、国民の安心・安全につながる。
 歯科技工士が社会から信頼され、魅力ある職業として認知されるよう日技は本事業を進めていく。

 

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