『日本歯技』2024年5月号巻頭言

『日本歯技』2024年5月号 巻頭言

知識と経験の継承 ~准終身会員制度の利用を~

 世界の人口は年々増加し、2022年には80億人に達した。今後もしばらくは人口増加が続くと予測されているが、その過半数は一部の国によるものである。多くの国や地域は少子化により人口が減少すると考えられており、加えて高齢化率の増加により、いわゆる少子高齢化は世界的な課題となっている。我が国においては、出生率が過去最高であった1949年から減少を続けた結果少子化が進み、総人口も減少している。また、医療技術の進歩も功を奏して平均寿命の延伸により高齢者人口は増加したため2010年には、65歳以上の割合が23%を超え世界に類を見ない超高齢社会となった。この傾向は労働力人口が加速度的に減少することを意味している。
 近年の歯科技工業界は、少子化や業界のネガティブな情報により、歯科技工士を目指す学生が減少しており、国家試験の合格者数も年々減り続けている。加えて、定年や廃業によりリタイアする人は増加し続けている。日本歯科技工士会(以下、「日技」)にとってこの環境は新卒の新入会員が減少し、退職などによる退会者が増加することになり、会員数の減少が危惧されている。
 このため日技では2022年に、75歳以上を対象とした「終身会員」と同等の条件で会に留まることができる「准終身会員制度」を発足させた。条件は60歳以上で、定年または廃業により歯科技工による収入がなく、会員歴が15年(60歳時)以上の方が任意で申請できるが、病気などの休業には適応していない。
 もちろん引き続き技工士会の中で精力的に活動するため自ら「准終身会員」には移行しないという選択もある。
 会費には日技会費と地域組織会費があるため、この制度を効果的なものにするには日技会費のみならず、地域組織にも同様の減額措置を講じていただくなどの協力が必要である。退会となれば日技にとっても地域組織にとっても損失であるが、会員として残っていただくことで連盟活動などへの協働など様々な効果があるはずである。
 長年にわたる会員で定年や廃業によりリタイアする方にも組織に残っていただき、その知識や経験を次の世代に引き継いでいただきたい。今後とも友好を深めた地域組織の皆様と交流が続けられるよう、この制度を活用していただきたい。

 

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