『日本歯技』2024年3月号巻頭言

『日本歯技』2024年3月号 巻頭言
 
歯科技工士における倫理と規制

 歯科技工士は歯科医師の委託により歯科技工を行っており、その行為は「モノ」を製作しているのではなく、治療の一部であると解釈されている。そのため、患者に対する最終責任は歯科医師に課せられている。従って、歯科医師は委託前の模型のチェックから納品後の歯科補綴物の確認などを行わなければならないため、歯科医師は自身の治療方針を具現化できる歯科技工士や歯科技工所を委託先としなければならない。
 では、そのような歯科技工士や歯科技工所をどのように探せばよいのか。歯科医師側は勉強会や知人の歯科医師、歯科技工士、取引歯科商店などを通じて紹介してもらうことが考えられる。一方で、歯科技工士(所)側からのアプローチとして、戸別訪問や事前承諾のもと関係資料を発送するなどによる営業活動が考えられる。
 しかし近年は不特定多数に対するダイレクトメールやファックスなどの広告を送付することによる違法営業が見られ、その内容には安価な歯科技工料や短納期、高品質など歯科技工士法第26条の広告の制限に明らかに抵触する言葉の羅列が見受けられる。さらに、近年のCAD/CAMの普及により、歯科技工所への広告も散見されている。こうした行為は歯科技工料金の値下げ競争などを引き起こし、歯科医師の希望に沿った歯科補綴物を製作しようとする歯科技工士の育成を阻害する原因の一つと考えられる。
 日本歯科技工士会はこのような事態を危惧し厚生労働省医政局歯科保健課に疑義照会を行ったところ、歯科技工士法第26条における広告の制限に関しても第27条の報告の徴収及び立入検査が可能であり、広告代理店などにより行われた場合であっても広告を依頼した歯科技工所に対する同様の措置を行うことができるとの回答を得た。
 今後はこの疑義解釈をもとに、問題事例があった際には行政へのアプローチなども含めた厳正な対処を行うことによる解決を図り、歯科医師と歯科技工士の信頼関係を築き、患者に対して高品質で適切な治療を提供できる環境作りを構築する必要がある。
 
 

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