『日本歯技』2025年10月号巻頭言




デジタル時代における学びと挑戦


 日進月歩で進化を遂げる歯科医療の中にあって、歯科技工の分野にもデジタル技術の波が押し寄せている。CAD/CAMや3Dプリンターをはじめとする新たな機器やソフトウェアの普及により、業務の効率化や高精度化が進む一方で、私たち歯科技工士には、これらの技術革新を適切に理解し、実践に活かしていくことが求められている。
 歯科技工士は、国民の口腔健康を支える専門職として、常に最新の知識と技術を習得し、それらを臨床に反映させていく姿勢が求められる。本会が主催する生涯研修事業は、そうした資質向上と専門職としての責務を果たすうえで、極めて重要な意義を有している。生涯研修では、デジタル技術に関する研修会のみならず、補綴装置や材料学など歯科技工全般にわたる内容に加え、感染症予防や働き方改革、診療報酬改定など、多岐にわたるテーマで実施し、幅広い学びの機会を提供している。
 新型コロナウイルス感染症の流行により、対面による研修会の開催が困難な時期もあったが、地域組織のご尽力により、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式を導入し、研修会の継続が実現した。リモート研修には場所にとらわれず参加できるという利点があり、一方で対面研修では直接のやり取りや実技指導が可能である。今後も、それぞれの特性を活かしながらハイブリッド型研修のあり方をさらに整備・発展させ、より充実した学術支援体制の構築を目指していく。
 また、学術部門における業務のデジタル化も重要である。研修会の運営等を効率化するためのオンライン基盤の整備は、全国の会員がより均等に学べる環境の実現につながり、段階的に取り組んでいく。
 デジタル歯科技工は日々進化し、歯科技工の現場もその変化の只中にある。こうした変化に柔軟に対応し、技術を的確に活かしていくためには、歯科技工士一人ひとりが学び続ける姿勢が何よりも重要である。変化の時代においても学びを止めることなく、技術と知識を高め合うことは、専門職としての責務である。
 今後も共に学び、共に成長しながら、歯科技工の新たな可能性を切り拓いていくことを強く願う。
 

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