新型インフルエンザ知識と予防
- 生涯研修・催事情報
	平成21年5月19日
新型インフルエンザウイルス:敵を知る
	東京歯科大学名誉教授
平成帝京大学教授
奥 田 克 爾
平成帝京大学教授
奥 田 克 爾
次々に出現する新型インフルエンザ
  私たちは、次々に出現する変異する新型インフルエンザウイルスとの戦いを余儀なくされています。今回のブタ由来のA型H1N1新型インフルエンザウイルス は、病原性が強くないもので高校生を中心に蔓延しています。さらに、強毒なトリ由来のA型のH5N1インフルエンザがヒトからヒトに感染して、大流行する 恐れもあります。敵をまず知っておきましょう。

インフルエンザウィルスのHA 突起とNA突起は、感染の鍵をにぎるものです。タミフルとリレンザは、NA突起を阻害するインフルエンザ治療薬で、今回のインフルエンザによく効きます。

歯科技工所での新型インフルエンザウイルス感染予防は。B型肝炎ウイルス対象に行う消毒滅菌法で充分です。しかし、飛沫感染(空気感染)することが、肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)と異なる点です。
 
一般的な感染予防は、下記のとおりです。
 

インフルエンザウィルスのHA 突起とNA突起は、感染の鍵をにぎるものです。タミフルとリレンザは、NA突起を阻害するインフルエンザ治療薬で、今回のインフルエンザによく効きます。

歯科技工所での新型インフルエンザウイルス感染予防は。B型肝炎ウイルス対象に行う消毒滅菌法で充分です。しかし、飛沫感染(空気感染)することが、肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)と異なる点です。
一般的な感染予防は、下記のとおりです。
- 人ごみにやたらと出かけないことです、体調が悪い時はやめましょう。
- マスクの使用も効果があるといわれますが完璧ではありません。
- 外出からもどったら手洗いやうがいを家族全体で行いましょう。
- 喉を含む口の中の細菌は、インフルエンザウイルスのサポーターです。 日頃からのお口の健康ならびに清掃が大切です。
新型インフルエンザウイルスに適する消毒薬
 インフルエンザウイルスは、エンベロープと言われる脂質二重膜で覆われていますので、多くの消毒薬に感受性があります。使用しやすいのがスプレー用の消毒用エタノールです。インフルエンザウイルスの感染をサポートし、感染後の重症化に係わる咽頭・口腔内のバイオフィルムという細菌集団には、消毒薬は効きにくいことが分かっています。ルゴールとかイソジンという商品名で発売されているポビドンヨード液は、ある程度バイオフィルム細菌集団を殺菌し、インフルエンザや風邪ウイルスにも有効です。

 

消毒薬の消毒効果、使用濃度および使用上の注意
| 消毒薬名 | 消毒効果 | 使用濃度 (%) | 対象 | 使用上の注意 | ||||
| 一般細菌 | 結核菌 | 芽胞 | 真菌 | ウィルス | ||||
| 石炭酸(フェノール) | ++ | ++ | - | ± | - | 1-3 | 手指 | 皮膚刺激性がある | 
| クレゾール石鹸 | ++ | + | - | ++ | - | 1-3 | 手指、器具類 | 腐蝕作用もある | 
| トリクロサン (イルガサンDP-300) | ++ | + | - | + | (+) | 0.3-0.5 | 手指、器具類、 洗口剤 | 手指や皮膚の消毒に使われる 多くのウィルスに無効 | 
| 次亜塩素酸ナトリウム | ++ | + | + | + | ++ | 0.0001 (1ppm) 0.02-0.05 | 飲料水、プール、器具類、汚染器具 | 有機物が存在すると有効塩素が減少する 金属腐蝕、皮膚刺激性がある | 
| ポビドンヨード | ++ | + | (+) | ++ | ++ | 0.25-0.5 | 手術野、手指、 口腔粘膜の消毒 | 刺激性が少なく手術野の消毒に適している | 
| ヨードチンキ | ++ | + | (+) | ++ | ++ | 5-10 | 手術野 | 刺激、金属腐蝕がある | 
| ホルムアルデヒド (ホルマリン) | + | + | + | + | + | 1 | 皮膚、金属、 プラスチック、 ゴム製品 | 刺激臭、毒性が強い | 
| グルタールアルデヒド (グルタラール) | ++ | ++ | + | ++ | ++ | 1-2 | 手術器具、麻酔器具 | アルカリ溶液は2週間使用出来る 臭気、皮膚、粘膜刺激性がある | 
| エタノール | ++ | ++ | - | ± | (+) | 70-80 | 皮膚、手指 | 粘膜と目を刺激する | 
| イソプロパノール | ++ | + | - | ± | (+) | 30-50 | 皮膚、手指 | 目を刺激する | 
| グルコン酸クロルヘキシジン | + | - | - | - | - | 0.05-0.5 | 手指、口腔内、器具、便座、膀胱内、手指、手術野 | 毒性は低いし、皮膚刺激性もない 本剤に過敏な症例が報告されている | 
| 塩化ベンザルコニウム | ++ | - | - | ++ | ± | 1-5 | 手指、食器、ガラス器具、プラスチック | 毒性は低いが殺菌力は弱い 普通石けんと併用すると効果がなくなる | 
++:効力大 +:効力あり (+):一部に効力あり ±:やや効力あり -:効力なし
奥田克爾編集 「最新口腔微生物学」 (一世出版、2009年)から引用






